全米販(全国米穀販売事業共済協同組合、木村良理事長)は7月22日、「食料・農業・農村基本法の検証・見直しに関する意見・要望」(いわゆるパブリックコメント)を以下の通り提出した。
基本理念
「平時・不測時における食料安全保障」を実現するため、海外からの食料調達力を強化し、自給率の低い品目の国産化に努めるのは当然の施策だが、それだけでは不足。同時に100%自給可能なコメの食率を上げることで、輸入食料への依存度を引き下げる施策も必要。国民の生活習慣病予防・栄養バランス改善等の健康増進の観点に加え、地域の持続性向上、食料安全保障にも貢献する観点から、このコメ食率の向上を基本理念に盛り込むべき。
食料分野
「平時における食料安全保障」に関する「食品アクセス」問題に対して、物流観点においてはデジタル化の推進に伴う流通の効率化・労働環境改善を図るべきである。また、福祉的な観点においてはいわゆる「日本型フードスタンプ」を、「おこめ券」などで確立することを提案する。ことにフードバンクや子ども食堂に対する支援を、現物でなく金券によって代替することで、支援される側の選択肢の幅を広げることに繋がるためだ。
農業分野
「末端の農業インフラの保全管理」については、公益性を高め、広く社会全体で保全管理コストを負担する仕組みを考えるべき。農村インフラ版のユニバーサルサービス料の仕組みを導入する等、国民全体で支えることも一考すべき。「農村ビジネスの創出」においては都市人材が副業で関われるようにする等、多様な働き方の支援や促進に向けた政策を求める。新規就農者の移住に対する支援やリモート業務環境の整備が必要である。
環境分野
持続可能な農業、特に生態系への配慮に関して世界に先駆けた価値の創出が出来るよう取組み・支援を強化すべきである。但し、その手段は農法で定めず、地域に応じた柔軟な選択を認め、結果に着目するべき。例えば生産性の向上により収量を確保しつつ水田を湿地に復元する等の取組みで生物多様性の改善効果が確認された場合も評価されるべき。また、それらの結果を消費者に分かり易く訴求する手段を国が主導して開発するべきである。
食料・農業・農村基本計画等
「平時・不測時における食料安全保障」と食料自給率の向上とは、互いにリンクすると思料。自給率の低い品目の国産化施策は当然だが、100%自給可能な米の食率を上げることで、輸入依存度を下げる施策も必要。また飼料用米で育てた畜産物のブランド認証等の施策は畜産物自給率の引き上げ・産業活性化に繋がる。この米食率と飼料としての米使用率の向上を、自給率向上の最優先施策に位置付け、自給率目標の構成要素に盛り込むべき。
関係者の責務、行政機関及び団体その他
輸出促進のみならず国内市場に向けた理解増進に向け、原発事故による風評や、農薬の適正使用の意義、水田と生態系の関係等、最新の科学的知見に基づき力強く発信することが重要である。また、原料代・輸送費・人件費等のコスト増に加え、環境問題をはじめとする社会に求められる価値を創出するために必要な費用を適正な価格として反映すべく、透明性の高いコミュニケーションの推進を打ち出すことで、消費者の理解を増進するべき。