農林水産省は1月31日、食料・農業・農村政策審議会の食糧部会(部会長=大橋弘東京大学副学長)を開き、基本指針(米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針)を再審議した。だが農水省が提出した基本指針案には、既報の「買い戻し条件付 政府米売渡」を新たに盛り込んだだけで、肝心の需給見通しにはほとんど修正を加えなかった。
昨年10月30日、いわゆる10月指針(基本指針の変更)の際、「今後、令和6年産米の収穫量の確定や精米歩留まり、在庫、消費の動向などを見極め、令和7年(2025)の年明け以降に食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開催し、令和7年から令和8年にかけての需給見通しの見直しについて、改めて諮問する」と異例の附帯事項を設けていた。
基本指針の需給見通しに加わった修正は、確定作況に伴い令和6年産主食用米の生産量を4万t下方修正しただけ。需要量見通しも令和7年産主食用米生産量見通しも一切変更を加えていない。このため民間在庫は、今年6月末158万t(前年同期比+5万t)、来年6月末178万t(+20万t)と、米価変動の分岐点とされる180万tをギリギリ下回った。ただし本紙調べで、都道府県ごと設定している生産数量目安を合算すると令和7年産主食用米生産量は694万t(既報)となるため、これを当てはめると来年6月末在庫は189万tになる勘定。
なお今回、参考資料のなかで、令和6年産篩下米の推定発生量を40万t(前年比+8万t、令和4年産比▲11万t)、令和6年(2024)推定インバウンド需要量を5万2千t(前年比+1万2千t)と記している。
「買い戻し条件付 政府米売渡」は、もともとの予定通りとはいえ、基本指針に項目を盛り込むだけに終わった。具体的な仕組みは今後、検討する。ただ農水省は、「仮に今回の集荷量不足に対し、今回の仕組みによって政府米を貸し付けるのであれば、不足しているのが令和6年産である以上、令和6年産を貸し付けるのが筋。ただし、他年産を放出する可能性も否定できない」としている。ちなみに令和6年産の政府買入数量は17万2,016t。集荷業者に「集まっていない」とされる数量と奇妙に符合する。
基本指針(新) | 基本指針(旧) |
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第3 米穀の備蓄の目標数量その他米穀の備蓄の運営に関する事項 1 備蓄運営の基本的な考え方 (1)政府が行う備蓄については、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することとされていることから、毎年6月末時点での在庫量100万トン程度を現行の適正水準として、需給状況を踏まえつつ必要な数量の米穀を保有することとします。 備蓄運営手法については、平成23年度から棚上備蓄方式に移行しました。 棚上備蓄方式による備蓄運営の基本的な考え方は、 ①~③ (略) ④ 備蓄米は、備蓄後に飼料用等の非主食用として販売 なお、加工原材料用販売(従来から販売している備蓄米のうち精米形態で保管する米穀の販売を除く。)については、前年産の加工原材料用の国内産米の供給量が大きく減少し、米加工品製造業者による当年産への切替えの前倒し及び第4のミニマム・アクセス米への代替が行われてもなお端境期の供給が不足すると認められる場合において、当年8月以降の入札により行うものとする。 ⑤ 大凶作や連続する不作などにより、民間在庫が著しく低下するなどの米が不足する時における備蓄米の放出については、食料・農業・農村政策審議会食糧部会において、放出の必要性に関し、作柄、在庫量、市場の状況、消費動向、価格及び物価動向等について総合的な観点から議論を行い、これを踏まえて、農林水産大臣が備蓄米の放出等を決定 としています。 (2)他方、毎年11月30日までに行う基本指針の見直し後、不作以外の災害等による緊急事態により、主食用米等の需給見通しに沿った「主食用米等供給量」の確保に支障が生じる場合であって、農林水産大臣が必要と認めるときは、その供給量の減少分を備蓄米により代替供給できることとします。 (3)また、(1)⑤の放出及び(2)の代替供給のほか、主食用米の円滑な流通に支障が生じる場合であって、農林水産大臣が必要と認めるときは、備蓄の円滑な運営を阻害しない範囲で、買受資格者に対する主食用としての備蓄米の売渡しを、政府が当該買受資格者から一定期間後(1年以内)に当該備蓄米と同等同量の国内産米の買入れを行うとの条件を付した上で、できることとします(買戻し条件付売渡し)。 (4)なお、備蓄運営手法については、棚上備蓄方式による備蓄運営や、経営所得安定対策の実施状況など、今後の米穀の需給をめぐる状況を踏まえつつ、毎年検証を行い、適正かつ効率的な備蓄運営に向けて、今後とも必要な見直しを行うものとします。 | 第3 米穀の備蓄の目標数量その他米穀の備蓄の運営に関する事項 1 備蓄運営の基本的な考え方 国が行う備蓄については、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することとされていることから、毎年6月末時点での在庫量100万トン程度を現行の適正水準として、需給状況を踏まえつつ必要な数量の米穀を保有することとします。 備蓄運営手法については、平成23年度から棚上備蓄方式に移行しました。 棚上備蓄方式による備蓄運営の基本的な考え方は、 ①~③ (略) ④ 備蓄米は、備蓄後に飼料用等の非主食用として販売 なお、加工原材料用販売(従来から販売している備蓄米のうち精米形態で保管する米穀の販売を除く。)については、前年産の加工原材料用の国内産米の供給量が大きく減少し、米加工品製造業者による当年産への切替えの前倒し及び第4のミニマム・アクセス米への代替が行われてもなお端境期の供給が不足すると認められる場合において、当年8月以降の入札により行うものとする。 ⑤ 大凶作や連続する不作などにより、民間在庫が著しく低下するなどの米が不足する時における備蓄米の放出については、食料・農業・農村政策審議会食糧部会において、放出の必要性に関し、作柄、在庫量、市場の状況、消費動向、価格及び物価動向等について総合的な観点から議論を行い、これを踏まえて、農林水産大臣が備蓄米の放出等を決定 としています。 他方、毎年11月30日までに行う基本指針の見直し後、不作以外の災害等による緊急事態により、主食用米等の需給見通しに沿った「主食用米等供給量」の確保に支障が生じる場合であって、農林水産大臣が必要と認めるときは、その供給量の減少分を備蓄米により代替供給できることとします。 なお、備蓄運営手法については、棚上備蓄方式による備蓄運営や、経営所得安定対策の実施状況など、今後の米穀の需給をめぐる状況を踏まえつつ、毎年検証を行い、適正かつ効率的な備蓄運営に向けて、今後とも必要な見直しを行うものとします。 |