全米販(全国米穀販売事業共済協同組合、山﨑元裕理事長)は6月11日の総会後、懇親会を開催した。冒頭、直前の理事会で決定した新執行体制を紹介。山﨑元裕新理事長が挨拶に立った。鈴木憲和農林水産副大臣(自民党、衆・山形2区)、石破茂元農林水産大臣(自民党、衆・鳥取1区)をはじめとする国会議員の祝辞のほか、乾杯、中締めの挨拶も含め詳報する。
△〈冒頭挨拶〉山﨑元裕新理事長
先ほど理事会におきまして理事長に選任いただきました山﨑でございます。よろしくお願いいたします。本日はご多忙の中、全米販の懇親会にご臨席賜り、誠にありがとうございます。心よりお礼申し上げます。
理事長を拝命するにあたりまして、その役目について考えました。全米販の発足は、平成13年(2001)10月1日です。 もとは全糧連、全米商連という2つの団体が統合した組織です。 統合に至るには、諸先輩方の並々ならぬご努力と、農水省当局をはじめ関係機関の多大なお力添えがあったと感謝しています。
「両団体一本化の目的」と題する資料が残っております。そこには5つの狙いが記されています。 1つ目が、「強力な対外折衝力を持つ組織の実現」。2つ目は、先生方の前ですみませんが(笑)、「強い政治力を持つ組織の実現」。3つ目は「スリムな組織を目指し、組合員の負担軽減を図る」、 4つ目が「適時適切な情報の提供に努める」、5つ目が「組合員の持つ特性に応じ、組織環境の向上に資するよう組織運営を行う」。
およそ25年前のことでございますので、時代背景や、米をとりまく環境も今とは大きく異なっているかと思います。しかしながら、この資料では組織そのものについての記述のみで、米流通については触れていません。また、現状の当組合の定款には、「組合員の相互扶助の精神に基づき、組合員のために必要な協同事業を行い、もって組合員の自主的な経済活動を促進し、かつ、経済的地位の向上を図ることを目的とする」と書かれています。いずれにも組織強化と組合員の経済活動、それが中心で、米、あるいは食料という言葉が記載されていません。とすると、全米販理事長の役目は組織管理だけでいいのか、ということです。
食管法の廃止は平成7年(1995)11月1日でした。およそ30年前です。失われた30年という言葉がよく使われていますが、米穀流通業界における30年間はどうだったか、というところです。
今般、私どもで「米穀流通2040ビジョン」を整えました。米穀流通業者が担うべき事柄は、たくさんあると存じております。将来、産業として魅力のある米穀流通業界となるために、 その一助となる全米販を目指し、一生懸命に努力してまいります。皆様にはご指導、ご鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます。
△〈祝辞〉鈴木憲和農林水産副大臣
私が20年前に政治家になる前に農水省に入って、一番初めに携わったのが食糧法の改正という案件でありました。 それ以来、米の世界をしっかりと持続可能な形で次の世代につないでいくことが、結果、日本の農業を持続可能にし、国民の食料の安定供給ということにするんだということを肝に命じて、政治活動をさせていただいているつもりです。
木村前理事長は、全米輸の会長でもあらせられますけれども、 外に向かって日本の米がチャレンジできる時代に入ったなという風に思う一方で、生産基盤はかなり厳しい現実があります。(そういうなかでも)皆さんと一緒にこれから良い時代を作ってまいりたいという風に思っておりますので、引き続きご指導をお願いできればという風に思っております。 食料・農業・農村基本法も改正をされたばかりで、これからが勝負です。農水省と全米販の皆さんと、二人三脚で取り組んでまいりたいと思います。
△〈祝辞〉石破茂衆議院議員
15年前に農林水産大臣をやっておりました石破です。(米穀機構の)DIって言うんですか、 逼迫度数っていうんですかね、「79」っていうのは久しぶりのことだと思います。私はしょっちゅう外食に行くわけではないんだが、米の「おかわり自由」っていうのが最近なくなって、あんまりおかわりしちゃいかん、みたいな話になってきました。で、今年は6年ぶりに増産ということなんだそうであります。ブランド米もやたらと高くなりました。さあ、一体どうなんだねっていう話。
食料安全保障の話なんですけど、昔から「腹が減っては戦はできん」とはよくいったもので、どんな立派な戦闘機を買って、戦車を持っても、食料がないと戦は続けられない。ウクライナを見ればわかるように、核兵器を持った国相手の戦争っていうのはそんなに早くは終わらない。2年、3年続く。細川内閣のとき、というと覚えていらっしゃる方はどれだけいるかわかりませんが、作況指数が「74」(平成5年)で、大騒ぎになりました。あの時と比べて、水田面積は恐ろしく減っていて、生産量も減っていて、異常気象のなかで、本当に大丈夫ですかっていうことは、もう少し真面目に考えたいと思っております。 (鈴木副大臣に)副大臣、よろしくお願いしますね。
米穀通帳なんて言っても今や誰も知りません。「そんなものあったんですか」みたいなことになりました。仮に本当に食料がなくなってきた時に、「校庭にサツマイモを植えればいい」、みたいなことを言う人もいますが、そんなに簡単な話でもございません。どうやって食料を供給するか、その仕組みがこの国ではございません。どうしますかということが、多分政策のなかから抜けてるんだろうと思います。
どこがそれやるんだろうっていうと、“食糧庁”がやるのかどうなのかというお話があります。私、本当に、生産調整って今でも続いているけれど、「これを続けていて本当に大丈夫ですか」って議論を、 もう一回しなきゃいかんのだろうと思っております。
農林水産大臣だったときに「生産調整をやめる」とか言って大騒ぎになりましてですね。その後、政権が変わっちゃったので、その政策を完遂することはできなかったんですが、世界中が農地を増やして、食料を増産している中にあって、日本国だけが税金を使って主食を減らし、生産を減らして農地を減らして…みたいなことが、本当にサステナブルなのかというと、それは多分違う。もう一回、日本国の安全保障として、どうしますかということを、また皆さんと考えてまいりたいと思っておる次第であります。
△〈祝辞〉古川元久衆議院議員(国民民主党、衆・愛知2区)
先ほどの新理事長のご挨拶の中で、「強い政治力」というお話がありました。最近はお金で政治を動かす、といったような話が問題になっています。お金が政治を全く動かさないとは申しませんが、お金は所詮お金で、「金の切れ目は縁の切れ目」などとも言いますが、長続きはしません。本当の意味で政治を動かそうと思ったら、やっぱりこれは、人と人との繋がりだと思います。やっぱり人は最後は理屈では動かない。「この人なら」、やっぱりそういうことで人は動くんだと思います。ですから是非いろんな絆を繋げていくことが、結果的に強い戦力を持つことにも繋がると思います。
石破先生が言われた30年前、私はニューヨークに留学をしていました。当時、日本から来る人たちが「日本で米が足りない」と言って、帰りに米を買っていくんです。それを思い出しました。 主食である米が、アメリカに行って買って帰ってこないと食べられない、そんな状況が起きないように、しっかりやっていくのが私たち政治の仕事だと思います。
△〈乾杯〉塩沢均ベイクックコーポレーション㈱社長(全米販関東ブロック協議会会長)
まず、木村前理事長には大変ご苦労様でございました。全米販はもちろん、米穀流通業界のリーダーとして大変長く牽引していただいた、そんな風に思っています。感謝の気持ちとともに労いの気持ちいっぱいであります。
今、お米のほうが大変なのは、多分この会場にいる皆さん、どなたも一緒だろうと思っております。ちょっと足りないかなと。それから、いろんな要因があり、価格が上がっている。なんというか、ちょっと潮目が変わったんだなと、個人的には思っています。潮目というよりも、もしかするとステージが変わって、 次のステージへの扉が開いたのかな、なんていうところを感じられるわけです。
どんなステージなのかっていうのは、まだ全然見えてこないというところがあります。真っ暗というわけではないですが、ぼんやりとしていて、手探りの中でどうやって行けばいいかっていうのは、一企業の人間として考えるととても不安があり、前が見えづらい状況になっているのかなっていうのは正直なところです。こんな時こそ、この全米販という組織に、ぜひとも明かりを灯してもらったり、少し先が見えるようにして、先頭を切っていただければ大変ありがたい、そんなふうに思うところであります。ぜひとも山﨑新理事長には全米販をしっかり牽引をして、ニューリーダーとして引っ張ってもらいたい、そんな気持ちでいっぱいでございます。
△〈中締め〉藤尾益雄㈱神明社長(全米販副理事長)
あまりにも冒頭の石破先生の話が良すぎて、 私今日話そうと思っていたことがくすんでしまうので、あんまりだらだら話さない方がいいかなと思いますので、簡単にちょっとご挨拶させてもらいます。
よく「人生は3つの坂がある」って言われます。「上り坂、下り坂 、まさか」。 これは人にとって、というのは当然ながら、やはり企業にもあると思うんです。決算が増収増益ですごく調子がいい時もあれば、逆に売上がどーんと落ちて赤字に転落したりとか、資金繰りが大変だったりとか、やっぱりそういった時もあります。今、我々が置かれているこの米穀業界はどうかというと、先ほど話がありましたように、生産者はどんどん減っていって、生産量がそれに伴って低下していく、また消費もどんどん減っていくということで、 ほんとに急激な下り坂を走っていこういこうとしてるんですね。そこで必要なのは、やはり「まさか」だと思う。新理事長を中心に、我々みんなで力を合わせて、奇跡を起こすしかないという風に思うんです。その奇跡を起こすことによって、やはり私は卸の存在価値というものが固められると思います。