◇ 全米販総会①木村理事長挨拶

 全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)は6月11日、都内で令和6年度(2024)通常総会を開催した。分割して詳報する。既報の通り、この日17年ぶりに理事長が交代。山﨑元裕前副理事長が理事長に就任、木村良前理事長は退任し、相談役に就いた。まずは総会冒頭、木村前理事長の理事長として最後の挨拶から。

 皆様こんにちは。今日は大変気温の高いなか、よくお集まりいただきました。ありがとうございます。この総会で皆さんのお顔を見るのが大変楽しみでございます。本日は、令和6年度の全米販通常総会でございます。今までであれば、冒頭はコロナの話題から入ることが多かったわけでございます。しかし、コロナは5類という位置づけになり、ブランクを取り戻すように急速に消費が回復してまいりました。逆に言うと、米が手に入りづらいとおっしゃる方おられるかもしれませんけども、(皆さんの)決算は総じて悪くないという風に伺っております。

 先ほど、司会からも本総会で任期満了に伴う役員の改選があるとお伝えしました。 今回の総会を持ちまして、私は理事長を退任しようと考えておりまして、そのつもりでこの1年、2年をやってまいりました。いずれにしろ、皆様の承認を受けた上で新理事の中から新理事長を選んでいただくということになるわけでございますので、後ほど、ひとつ真剣によろしくお願いしたいと思います。

 特に最近は世界的に大きな事件ばかりございます。戦争、先ほど申し上げたコロナのようなもの、地球温暖化といった問題や、足元でいえば資材の価格高騰、日本でいえば円安の問題など、数えればきりがないぐらい色々なところで様々な問題がおきています。そして世界の問題が、身の回りにも深く関係してくるというような時代になってまいりました。そういう中で、米も今年は大変苦労しているというところだと思います。

 令和5年産というのは記録的な猛暑と渇水による高温障害により、東日本の日本海側を中心に、主要な産地で軒並み等級を落とし、精米歩留まりも落としてしまういうことが起きました。皆様にも過去数年なかったようなことが起きているわけでございます。これだけが原因とは言えませんが、精米の原料価格が上がり、前年に引き続き私どもも記者会見もしましたが、引き続き流通経費も上がってまいりました。一方、売価への価格転嫁は、ひと頃に比べれば受け入れられるようにもなってきました。ただ、今年春になると、価格転嫁のスピードを追い越すように、スポット価格が上がってきました。経営的にもなかなか難しい状況になっているのが実情だという風に思います。全米販としても、5月28日に、皆様に「ちょっとひと呼吸、深呼吸をしてから調達を」ということで、前例もお示ししながら、相場の現状をまとめた「令和5年産米スポット相場の現況について」と題するメッセージを皆様に発信をさせていただいたところです。回復基調の米の消費に水をささないように、ということを望んでいます。

 さて、昨年1年かけて、中長期の「米穀流通ビジョン2040」というものの検討を重ねてまいりました。 ブロック協議会などでご説明させていただいたこともご記憶にあるかという風に思います。明日(6月12日)、総会後の定例の記者会見を開きます。それと同じタイミングで一般に公表させていただこうという予定でおります。この中の皆さんも、おそらく衝撃を受けられたのは、「2030年代に国内需要量を国産の米だけでは賄いきれなくなる」、そういう可能性がある、というくだりだったのではないだろうかという風に思います。こうした予測を示させていただいた趣旨は、「想像以上のペースで生産力は落ちてきている」ということを知っていただき、そして組合員の皆様にも積極的に産地との関わりをもっていただきたいというためであります。

 そのために必要なこととして、水平(横)の連携、生産から実需までの垂直(縦)の連携、 それらを強化し、取り組みをしっかりしていただいて、 「協動」という考えで皆様が動いていただくことが大切だと考えました。これを機に、少しずつ、全米販も変わっていこうとしています。 組合員の皆さんとともに、ぜひ魅力的な米穀流通を実現させて参りたいという風に考えており、そのようにビジョンのなかでは述べております。

 さて、今日は総会ですので、令和5年度の事業報告、収支決算、令和6年度の事業計画案、収支予算案、そして先ほど申し上げましたように、 任期満了に伴う理事・監事の改選を上程し、ご審議をいただくこととしております。
 令和5年度の全米販は、北海道など各地の自治体事業が非常に活発で、おこめ券の需要が増えました。これらが寄与して、3年連続の黒字決算となりました。
 共済事業では契約こそ前年並みでしたが、本年元日に起こった能登半島地震があったなかでも、不幸中の幸いで、契約者の被災が大変少なかったということもあり、3年連続で共済の支払いは多くなく済み、準備金に繰り入れていくことができました。天災がいつ起こるかわからないということが現実ですので、準備というものを欠かさないようにしたいと考えております。同時に組合員の方々の多大なるご協力を得て、被災地へ合計で700万円余の寄附をさせていただきましたことをご報告させていただきたいと思います。子会社㈱クリスタルライスも、3期連続で黒字を計上できています。

 今年度は引き続き経費縮減に努めるとともに、企業火災共済のさらさらなる推進、おこめ券事業のさらなる普及に取り組んでまいります。また、今年度事業計画に関しては、先ほど申し上げましたように、米穀流通2040ビジョンの具体化に向けた取り組みを進め、全米販の目的や存在意義を、皆さんも一緒に確認する作業を始め、年度内に中期計画を策定していく意思であります。

 ここで一つ新しいニュースを一つ申し上げます。事業計画のなかに登場する外部向け情報発信サイト「ごはん彩々ニュース」ですが、本日2時にオープンしております。今急にスマホで見ていただかなくてもいいと思いますが(笑)、「全米販の主張」を広く一般に浸透させるための器づくりが目的で、組合員の皆様への情報提供は、これまで通りKOME速報を充実させることで対応して参ります。

 以上各議案についてごよろしくご審議をお願いしたいと思います。最後になりますが、組合員の皆様が生産者、消費者双方にとって役立つ存在として認められる米卸として発展していけるよう、全米販も皆様とともに考え、行動していく所存であります。引き続き全米販の活動にご理解をお願いいたします。