令和5年(2023)の加工米飯の生産量は44万68tと、7年連続で過去最高を更新。直近10年間で生産量が1.3倍に増加した。6月7日、米穀機構(《公社》米穀安定供給確保支援機構、福田晋理事長)が公表した「パックご飯の生産・販売・購入状況」によるもの。
まず、おさらいとして「加工米飯」とは何か。「調理したご飯を密封包装したご飯の加工食品の総称」で、パックご飯のほか、冷凍米飯、レトルト米飯、乾燥米飯、チルド米飯、缶詰米飯に分類される。このうち約5割がパックご飯、約4割を冷凍米飯が占める。
【加工米飯の生産動向】
生産動向をみると、精米消費量の減少が続くなかで、「社会構造の変化や食の外部化の進展に呼応するように増加している」という。「便利さだけではなく、品質や美味しさを追求した多様化する商品に加え、大災害の発生による防災意識の高まりなども影響した」としている。直近の令和5年(2023)の加工米飯の生産量は44万68tと、7年連続で過去最高を更新。直近10年間で1.3倍に増加した。
△パックご飯
パックご飯の生産量は平成23年(2011)に10万tを超え、令和元年(2019)には冷凍米飯の生産量(17万8,068t)を上回り、直近の令和5年(2023)の生産量は20万8,654t。直近10年間で1.5倍に増加した。この要因として以下をあげている。
○ 食の外部化の進展という大きな潮流のほか、大災害やコロナなどのパンデミックを契機に認知度が向上。
○ ごはんが足りない時や時間がない時などに使用する「補完的な常備食」としての利用から、簡単で美味しいといった商品特性が家事・料理の時短ニーズと合致。
○ 小分け、大盛り、ブランド米、おにぎり用(塩ごはん)、麦ごはん、雑穀米など、多様な消費者ニーズに製造各社が対応することで市場拡大が続いている。
○ 近年の単身世帯や高齢者世帯の増加が、パックご飯の日常的な利用拡大を後押ししている。
△冷凍米飯
令和2年(2020)以降、コロナ禍での「内食需要の高まりで家庭用需要は増加が続くものの、外出自粛に伴う外食向け業務用需要が低迷」し、全体としては概ね横這いで推移。だが直近の令和5年(2023)は18万1,357tと過去最高水準に回復した。
冷凍米飯は歴史が古く、「業務用、家庭用ともに電子レンジの普及とともに定着」し、順調に推移。だが平成20年(2008)~平成22年(2010)に生産量が大きく減少する。これは平成20年(2008)に発生した「中国製冷凍ギョーザ中毒事件」によって、「消費者の冷凍食品の安全性に対する信頼が揺らいだことが影響した」という。その後、平成27年(2015)には「冷凍チャーハン戦争」と呼ばれた「冷凍食品会社各社の競争激化が話題になるなど市場拡大が続き」、平成30年(2018)には過去最高の18万1,559tを記録している。
△レトルト米飯
長い間、横ばいで推移してきたが、東日本大震災が発生した平成23年(2011)に2万6,800t(前年比+43%)と急伸。その後は概ね3万t前後で推移していたが、直近の令和5年(2023)は4万1,713t(+29%)となり、過去最高だった平成26年(2014)の3万3,270tを大きく上回った。
【加工米飯の原料玄米の使用量】
令和5年(2023)の加工米飯全体の生産量44万68tを基に、使用されている具材などを想定して原料玄米の使用量を推計すると、概ね18万5,900tになるという。
このうち、パックご飯は10万9,700t程度と、原料玄米ベースでは加工米飯全体の約6割を占める。冷凍米飯の炒飯やピラフなどでは、ごはん以外の具材が一定程度含まれることから、原料米の使用量はその分少なくなっている。
米穀機構は、「米全体の消費量が減少するなかで、近年、成長が著しいパックご飯ではあるが、原料米の全体需要量に占める状況をみると、市場の拡大余地は十分にあると考えることができる」としている。