◇ 酒造組合中央会総会で大倉会長「輸出拡大へ、ドイツを重点ターゲットに」

 日本酒造組合中央会(大倉治彦会長=月桂冠㈱社長)は6月6日、第71回通常総会を開き、令和5年度(2023)事業報告・決算、令和6年度(2024)事業計画・予算などを決議した。

 冒頭、大倉会長は、日本酒の国内消費が減少の一途を辿っている一方、輸出が好調であることに触れ、「今年度はまず、ドイツを重点的なターゲットに市場拡大に努めたい。これまでのアメリカへの注力も継続する。また我が国の『伝統的酒造り』が、年内にもユネスコ無形文化遣産への登録が実現する見込みと聞いている。平成25年(2013)の『和食』の登録と同じように、これを機としたさらなる拡大に期待したい。来年開催される大阪・関西万博も見据えながら、『國酒』の魅力を国内外に向け発信していく」などと挨拶。

 このなかで原料米の調達にも触れており、「令和5年産米は、猛暑により品質が低下したことで歩留まりが下がり、調達に苦労した。引き続き行政や全農と緊密な連携をはかり、情報収集と原料の確保に努めたい」とした。

《令和6年度特定事業》
(農林水産物・食品の輸出に係る『重点品目』として指定された日本酒、本格焼酎・泡盛の事業)
〈日本酒のドイツ市場における市場拡大・需要開発〉
 約6,000人規模の日本人が在住し、欧州における日本文化の発信拠点の一つであるとともに、国際見本市会場としても有名であるドイツ・デュッセルドルフ市、ケルン市域において、世界最大規模の酒類展示会「Pro Wein」開催時期を、日本酒の現地での認知向上、販路拡大の好機と捉え、プロモーションを実施する。
△高級店における食事とのペアリング、蔵元PRイベント
△カジュアルレストランにおける蔵元PRイベント
△ハイエンド向け小売店店頭などにおける試飲イベント
〈本格焼酎・泡盛の米国市場における市場拡大・需要開発〉
 本格焼酎・泡盛については、米国の主要市場であるニューヨーク州、カリフォルニア州の両州において州法が改正され、韓国産ソジュ、日本産焼酎がそれぞれ「SOJU」、「SHOCHU」と表示して販売できるようになり、ソフトリカーライセンスのみのレストランで提供可能となった。この機を捉えて、現地の日本食レストランなどを中心として消費者に本格焼酎・泡盛の認知度向上を図るとともに、販路の拡大を図る。
△カリフォルニア州とニューヨーク州の日本食レストランなどを活用したイベント
△カリフォルニア州議会議員など向けセミナー
△米国内におけるさらなる市場拡大に向けた調査

《國酒(日本産酒類)振興のための決議》
 1.令和6年(2024)1月の能登半島地震では、北陸地方を中心に多くの酒造メーカーが被災した。税の申告期限の延長や財政上の支援措置など、国や地方自治体の速やかな対応に感謝したい。現在、大きく被災した酒造メーカーに対して、北陸地方の蔵元を中心として蔵元同士が団結して伝統的な地場産業として再建に向けた支援を行っているが、国及び地方自治体においても息の長い支援及びフォローアップをお願いしたい。
 長期に及んだコロナ禍で大きなダメージを受けた酒造メーカーは、社会経済活動の回復に併せ期待も込めて活性化してきているが、酒税の消費税との併課や高騰してきている原料米取引、物流問題等の負担を抱えながら、その克服に向けて各地域において努力を重ねている。今後とも、消費者の節約傾向の動きが出てきている中でも経営基盤の強化に向けて努力している酒造メーカーに対し、税、財政、金融等の各種施策の展開による支援をお願いしたい。
 2.國酒の輸出等に関しては、日本酒及び本格焼酎・泡盛が国の輸出重点品目となっている。当会は輸出促進法の認定品目団体として、引き続き、更なる認知度向上や販売促進を強化し、輸出に前向きな酒造メーカーを共助の精神で支援していかなければならない。
 また、我が国の「伝統的酒造り」については、ユネスコ無形文化遣産への申請が行われ、年内の登録が期待されている。当会としては、ユネスコ無形文化遺産の登録を機に、「伝統的酒造り」とその文化の保護継承に取り組むとともに、令和7年(2025)に開催される大阪・関西万博も見据えながら、「國酒」の魅力について、国内外に向けた戦略的な情報発信を強化していく。
 更には、業界及び酒造メーカーの経営強化のためにも酒類の安全・安心の確保やSDGs(持続的な開発目標)に向けた取組みを推進していくなど、内外の環境変化に適切に対応していくことが肝要である。
 3.令和5年(2023)10月からは、日本酒の酒税の引下げが実施され、醸造酒の酒税の一本化が図られた。また、令和6年4月からは、「承認酒類製造業に対する酒税の税率の特例措置」が新たにスタートしている。こうした制度改正が円滑に進み、各酒造メーカーの経営基盤の強化に結び付くためにも、原料米取引対策など、以下に掲げた取組みについて確実に行ってまいりたい。
 △能登半島地震の被災蔵元の復興に向けた取組への継続的な支援
 △政府の各種支援措置の要請とその活用及び事業の効果的・効率的な実施
 △ユネスコ無形文化遺産登録に向けた積極的な貢献と國酒の魅力の発信
 △原料米の安価で安定的な確保と担い手・物流などの供給体制の整備及び弾力的な支援
 △中国をはじめとする種々の輸入制限措置の撤廃、その他非関税措置の緩和・解消等
 △GI本格焼酎の指定に向けた取組み及び国内各地における地理的表示(GI)の指定の促進・相互保護の推進