◇ 紅麹事件続報、機能性表示食品検討会が報告書、情報提供など義務づけを提言

 小林製薬㈱(大阪府大阪市、小林章浩社長)による紅麹事件の続報。消費者庁は5月28日、「機能性表示食品を巡る検討会」(中川丈久座長=神戸大学教授)の最終「報告書」を公表した。それによると、健康被害情報の提供、(サプリメント形状の機能性表示食品に限った)GMP(適正製造規範)に基づく製造・品質管理、表示事項・方法の改善――を法令に義務づけるべきと提言している。提言の概要は以下の通り。

《健康被害情報の収集、行政機関への情報提供の義務など》
 ○ 機能性表示食品の健康被害があった場合、消費者庁・都道府県知事に情報提供することを義務化。情報提供ルールを食品表示法の食品表示基準に規定することで、違反した場合の罰則を適用できるようにする。
 ○ 提供義務は、全ての機能性表示食品を対象とすることが適当。
 ○ 提供義務の対象となる情報は、「医師において当該症状が当該食品に起因する又はその疑いが否定できないと判断した健康被害情報」とし、届出者がこれら情報を得た場合、「速やかに消費者庁・都道府県知事などに提供するものとする」ことが適当。なお個人の同意が必要な範囲を、あらかじめ検討しておくことが必要。
 ○ 重篤度などに対応して、提供期限に明確なルールを定めるべき。
 ○ 届出者が提供した情報を行政機関が公表する際、一定の基準が示されることが重要。
 ○ ほかに、「消費者庁が医師以外の医療関係者からも情報収集できる仕組みが必要」、「義務化対象外の情報であっても幅広に収集し、健康被害発生の恐れがある場合には自主回収など適切な対応をとることとすべき」との意見も。

《製造管理・品質管理など》
 ○ サプリメント形状の機能性表示食品に、GMP(適正製造規範)に基づく製造・品質管理を法的に義務づけるべき。特に機能性関与成分を含む原材料の受入段階のGMPは、最終製品との同等性や同質性の考えを基本とした対応を届出者の責任で実施させるべき。
 ○ 消費者庁でGMPのチェックポイントなどを整備する必要。また自己点検結果を消費者庁に定期的に報告し、必要に応じて立入検査する仕組みを検討する必要。
 ○ ほかに、以下を検討すべきとの意見も。「中小企業による自己点検を後押しする届出者による相互支援体制の整備など自主的な取組みの促進」、「菌体のような特殊な原材料を用いる場合のリスク管理に関する科学的知見の集積」、「届出後も自己点検と報告を(違反した場合に罰則を伴う)義務づけ」、「届出時に示された原材料と最終製品との同等性や同質性を担保し得る仕組みの構築。また自己点検や立入検査結果を消費者が容易に把握し得る公表の方法」など。

《(消費者への)情報伝達のあり方》
 ○ 以下の包装容器上の義務表示事項の改善が必要。「『疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨』の表示で、『医薬品ではないこと』を、『機能性表示食品である旨』と同一面に明記すること」、「『疾病に罹患している場合は、医師等に相談して摂取する旨』の表示で、当該食品の摂取の是非を相談する趣旨を明らかにすること」、「『摂取をする上での注意事項』の表示で、医薬品や他の成分との相互作用や過剰摂取を防止するための注意喚起など安全性上の留意事項を具体的に記載すること」。
 ○ トクホ(特定保健用食品)と誤認されないよう、以下の包装容器上の表示方法の改善が必要。「機能性表示食品である旨と届出番号を近接して表示し、識別性を高めること」、「安全性や機能性について、国の評価を受けた食品でないことを端的に表示する方法に改善すること。また機能性や安全性の科学的根拠など届出情報を消費者庁のウェブサイトで確認できることを明確にすること」、「トクホのように食品自体に特定の保健の目的があるかのように誤認させる記載などを禁止事項とすること」。
 ○ 容器包装上の表示以外の事項として、以下の事項に取り組むべき。「『栄養機能食品』、『特定保健用食品』、『機能性表示食品』から成る保健機能食品制度そのものへの消費者の理解増進を図ること」、「医薬品との相互作用や過剰摂取などリスクがあることについて、栄養バランスのとれた食品を適切に摂取することが健康の維持・増進にとって何よりも大切であることに対する消費者の理解増進を併せて図ること」。
 ○ ほかに、以下を検討すべきとの意見も。「消費者庁データベースなどのDX化」、「義務表示事項の内容を超えた広告など、届出者だけでなく関係事業者(販売業者や広告業者)も含め表示の適正化に向けた取組みの推進」。

 また大阪市と日本腎臓学会は5月24日、合同会見を開き、小林製薬の紅麹が原因とみられる患者と症例の性別・年齢・症状の調査結果を公表した。大阪市の調査は5月15日時点の2,050件が解析対象で、日本腎臓病学会の調査は4月末時点で登録のあった189症例が対象。
 それによると、数値に多少の差異はあるものの、性別は女性が圧倒的に多く、年齢は50歳代が最多であることが分かった。また症状は「倦怠感」が最多である点も共通している。

 〈健康被害状況〉厚生労働省による5月26日現在の公表によると、医療機関を受診した者は延べ1,606人(+4人)、入院者数は延べ280人(+2人)となった。また小林製薬㈱への相談件数は延べ約12万7千件(+3千件)、厚労省のコールセンターへの相談件数は延べ5,128件(+42件)となっている。

 〈自主回収(リコール)〉5月27日午後8時30分現在で、厚生労働省の専用サイトの「紅麹に関する届出された食品のリコール情報(小林製薬関連に限る)」に追加掲載された企業はなく、累計99社は18日間にわたって変わっていない。