◇ 加工米需要者8団体が政府米放出を要請

 全国加工米需要者団体協議会は4月19日、東京・霞ヶ関の農林水産省に平形雄策農産局長を訪ね、政府米在庫の放出を求める要請文を提出した。協議会は、全国味噌工業協同組合連合会、全国餅工業協同組合、全国穀類工業協同組合、全国菓子工業協同組合連合会、日本酒造組合中央会、日本冷凍食品協会、日本即席食品工業会、全国米菓工業組合の8団体で構成する加工米実需の集まり。代表して全国穀類工業協同組合の武内秀行理事長(みたけ食品工業㈱社長)が平形雄策農産局長に要請書を手渡した。要請文の内容は、去る4月11日に全味(全国味噌工業協同組合連合会)が単体で坂本哲志農相に要請した内容(既報)と微妙に異なっている。要請書全文は以下の通り。

加工原材料用向け原料米の安定供給について(要請)

 私ども日本の伝統的な米加工産業である味噌、餅、米菓、和菓子、日本酒、本格焼酎・泡盛、加工米飯、米穀粉等の製造を担う業界にとって、原料米は欠くことのできない資材であり、その安定供給が事業継続の必須条件となっています。

 こうした中で、令和5年産の加工米については、品質劣化と歩留り低下で仕入数量が減少し、更に、ふるい下米の発生量も減少したことから、他原料への切り替え対応にも限界が生じています。

 このため、令和6年産では、ふるい下米から加工用米への切り替えに取り組んでいますが、産地での取組計画は、加工米から主食用米や輸出用米への作付転換がみられ、加工用米は5年産を下回る見込みとなり、コメ加工業界としては、6年産の原料調達に非常に強い危機感を持っています。

 加えて、ふるい下米減少をMA米により補う場合、国の販売価格が高いことに加えて、包材切替にも多額を要し、経営に大きな負担となります。各業界は、上記に加え、喫緊の課題も抱えているところです(別紙)。

 我々コメ加工業界としても、原料米のほか、運賃、燃料、食用油等の資材費の高騰を受けて製品値上げを行ってきましたが、消費者への価格転嫁には限界があることから、せめて主原料となるコメの低廉な価格での安定供給を望むものであり、下記要請について特段の配慮をお願いします。

 1.喫緊の原料米不足を補完する措置として、備蓄米をコメ加工業界向けに販売し、令和6年産端境期の原料米不足を回避すること。

 2.令和6年産加工用米の円滑な取引に資するため、産地に対して加工用米に積極的に取り組むよう指導すること。

 また、令和7年度予算要求において、水田活用の直接支払交付金等の加工用米生産者への支援について、十分な要求額を確保すること。

 3.MA米については、輸入年度別・港別在庫に偏りがないよう配置し、販売に当たっては低廉な価格での販売に努めること。

(別紙)

全国加工米需要者団体協議会の各会員から出された意見

全国味噌工業協同組合連合会
・もう一つの主原料である大豆(輸入大豆)は3年前から先行して高騰している。
・タイ米は中小事業者にとって原料としての使用が困難である。(硬質米のため)

全国米菓工業組合
・パーム油、ごま油など食用油が高騰している。
・タイ産短粒種は現地入手で使用可能を確認しているので、一般輸入を望む。
・米菓はもち米の原料比率が45~50%。従ってうるち米需給だけでなく、もち米独自の需給情報が欲しい(米穀機構のめぐる事情では全農の集荷数量でさえ不明)。

全国菓子工業組合連合会
・原料米を直接購入するほか、中間原料としての普通の米粉を利用する事業者も多い。
・コメの生産、流通、販売に関する制度を単純化して、安価な原料米、普通の米粉が安定的に入手出来るような仕組みを望む。

日本酒造組合中央会
・特に焼酎において、米が6割しか確保できない蔵元や生産量を抑える蔵元も出ている状況。
・球磨焼酎はGI指定であり、生産基準で国産米を使用することとなっているため、比較的安価な外国産に切り替えることができない状況。

全国穀類工業協同組合
・米粉用米は用途外使用や仕向け先変更が容易でなく、コロナ期の需要減少対しては、組合員は長期保管、生産者は5年産の生産数量の縮減で対応することとなった。
・MA米が米粉調製品代替として機能できるよう、制度及び条件整備を図ること。

左から平形農産局長、全国穀類の武内理事長