◇ ヤマタネ持続可能な稲作研究会①萌えみのり最高単収720kg

 ㈱ヤマタネ(東京都江東区、山﨑元裕社長)は2月9日、東京・日本橋兜町のKABUTO ONEで、第1回持続可能な稲作研究会を開催した。昨年まで11回にわたり開いてきた「萌えみのり栽培コンテスト」を衣替えしたもの。米の品種の枠にとらわれず、栽培技術や米穀情勢、流通の報告など、「持続可能な稲作」を巡る幅広い情報交換の場として開催。「ヤマタネ2031ビジョン」に掲げる「持続可能な営農に向けた産地連携の強化」の実現に向け、研究会に参加した生産者らと「持続的な農業を可能にする地域づくり」を考えた。

山﨑社長

 冒頭、山﨑社長は、「ヤマタネが今年、100周年を迎える。持続可能な会社をめざし、成長を続けていきたいと思っている。創業から様々な事業を展開してきたが、なかでも大切な事業は『米』と『農業』。持続可能な稲作、農業を、日本のために支えていく」と挨拶した。

 ヤマタネと契約する多収穫米生産者を表彰する「萌えみのり栽培コンテスト」は、今回から「多収穫米栽培コンテスト」となり、対象品種が「萌えみのり」「しふくのみのり」の2品種に。第1回最優秀賞に輝いたのは、新みやぎ農協の千葉誠悦氏で、整粒値64.7%、食味値81.0、単収(10aあたり収量)720.0㎏だった。4部門ごとの入賞者(上位3名)は以下の通り。

 席上、ヤマタネの小山義昭米穀部次長が明らかにしたところによると、令和5年産 萌えみのりの出来(特徴)は、以下の通り。「日本海側の秋田の収量は過去3年で最も低かった。太平洋側の岩手は令和4年産、令和3年産と比較すると落ちていた。特に宮城は作況指数『105』もあり、収量が伸びた。ただ千粒量は、令和4年産と比べ▲0.9ポイントと、粒が小さかった。食味は、猛暑の影響も受けたが、生産者の努力もあり、安定的に推移した」。
 販売状況は以下の通り。「スーパーなどでの店頭での認知が広がっていることから、量販店の販売比率が増加。給食向けは数量は増えていないものの安定的に推移。一方で、外食・中食は伸び悩んでおり、萌えみのり自体の取扱数量の伸び悩みが主な原因となっている」。

 令和5年産しふくのみのりの出来(特徴)は、「萌えみのりに比べ、猛暑の影響が少なかったことから、整粒値が高かったものの、収量は5%ほど低い結果となった」という。販売状況は、「令和6年産から本格的に生産を開始するため、来年度から報告する」とした。
 令和5年産ヤマタネ多収穫米の取扱数量は、令和4年産に比べ微減。この一因は、「生産調整に生産者が真摯に取り組んだことで、非主食用途に流れたこと」と分析。令和6年産は「我々として数量を増やしていきたい」として、次の2点に注力するとした。
 1つ目は、コア領域の「高品質多収生産による手取りの確保」。2つ目は、チャレンジ領域の「契約栽培米生産者の抱える経営課題のサポート」で、コスト面や収益性の向上を「積極的に手伝っていく」という。この2点に注力し、生産者の取組みの魅力を向上させ、新たなチームメイトを増やすことで、「令和6年産、令和7年産と、取扱数量を徐々に増やしていく」との展望を示した。

 また、さらにその先の「ヤマタネがめざすところ」として、武田創一郎米穀部長が持続的営農の実現を、「産地の『続くを支える』」と表現。平成25年(2013)からスタートした「萌えみのりコンテスト・チーム萌えみのり始動」を第1ステージとして、今年から第2ステージに移行すると発表。第1ステージでは、チーム作り、田んぼ1枚あたりの収益の最大化に取り組んだが、第2ステージでは、「モデルケースの構築」に取り組むとした。産地の課題抽出から、解決策の実践、検証へと展開するもの。産地の抱える課題を、「1つでも、ちょっとしたものでも解決する手段を提供していく」としている。
 課題解決に向けた新たな取組は主に3つ。一つ目は、昨年10月に完全子会社化した㈱ショクカイによる、食品コストの削減。産地で廃棄となるような農産物を冷凍加工で有効活用することなどに取り組む。二つ目は、㈱バイオマスレジンホールディングスとの連携で、ライスレジン製の輸送用パレットの使用を開始。産地も環境配慮型農業への参画を依頼する。三つ目は、㈱日本農業との連携で、複合経営による経営安定化の支援や、耕作放棄地を有効活用した新たな価値創出、地域活性化や雇用の創出を図る。最後に「いかなることであっても、是非お声がけいただき、コミュニケーションを取らせていただければと考えている」と生産者に語っている。
 加えて、第3ステージは、令和10年(2028)からの開始を予定しており、構築したモデルケースの普及拡大をめざす。

〈続〉