◇ 全米販総会①理事長挨拶

 全米販(全国米穀販売事業共済協同組合、木村良理事長)は6月13日、都内で令和5年度(2023)通常総会を開催した。分割して詳報する。まずは理事長挨拶から。

 令和5年度 全米販通常総会の開会に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
 まず、位置づけが5類に落ちたとはいえ、いまだ続くコロナ禍のなか、本日、このように会場にお越しいただき、組合員の皆様と直接顔をあわせることが叶い、大変嬉しく、そして厚く御礼申し上げます。
 全米販では、昨年から総会のリアル開催に踏み切ったわけですが、それでもコロナ禍が終息気味に向かっていることは、素直に慶びたいと思います。是非、皆様との直接の会話を交えて、素直に慶びも分かち合いたいと思います。

 さて、そのコロナ禍による中食・外食向け需要の落ち込みから、今年は回復が期待され、実際そのようになりつつあるわけですが、未だコロナ前の水準への完全回復にまでは至っておりません。また量販店などの家庭向け需要は、やや停滞気味です。結果的に国産米の需要総体が果たして増えているのか減っているのか、微妙な状況にさしかかっていると言えます。流通を担う組合員の皆様方のご苦労は、過去になかったものと思います。
 令和3年産、4年産と2年連続して過去最大規模の作付転換をほぼ達成し、単年産でみればむしろ逼迫感が出ていますが、その前の古米、古々米在庫を消化しきれておらず、需給均衡に向かうかどうかは、これまた微妙なところです。

 世界的な物価高騰の影響を受け、日本国内でも食品をはじめ様々なモノの値段が上がっています。昨年のこの場で、「今こそ国産米の消費拡大を叫ぶチャンス」と申し上げましたが、現実には国産米すら原料代や諸経費の高騰の影響を受けてしまっております。
 そのため昨年は3度にわたって文書を発出することで、この諸経費高騰にご理解を求めてまいりました。しかしながら、諸経費の増嵩分を、なかなか販売価格に転嫁できる状況にないのが、悩ましいところです。

 片や農林水産省は昨年後半から、食料・農業・農村基本法の改正に向けた検討を始めており、どうやら我が国の「食料安全保障」の概念を改める方向へ舵を切りつつあるように見えます。我が国ではこれまで食料安全保障といえば、戦争など「不測の事態」を想定して、必要最低限の備えをするもの、と考えられてきました。そうではなく「平時から」、しかも「全ての人が、十分で安全かつ栄養ある食料を入手可能」な状態を指すもの、という概念です。
 この概念に立つならば、海外からの食料調達力を強化し、自給率の低い品目の国産化を進めるのは当然の方策です。しかし、それだけでは足りません。同時に、ほぼ100%自給できている米の消費を増やす方策にも力点を置くべきではないでしょうか。
 国は、例えば少子化対策も、子どもがいる・いないで差別化しない政策ではなく、真正面から「子育て家庭を優遇する」政策へと、大きく舵を切ろうとしているではありませんか。「平時からの食料安全保障」を真に実現するのであれば、国民の食料消費に介入し、コメ食率の向上へと強力に誘導する政策をも、同時に展開すべきと考えます。
 このような考え方に立って昨年、当時の農林水産大臣宛に「建議」させていただきました。この主張は、今後とも続けていこうと思います。

 本総会では、令和4年度事業報告、収支決算、令和5年度事業計画案、収支予算案などを上程し、ご審議いただきます。
 令和4年度、全米販では、何よりも年度の後半に至って「おこめ券」の自治体需要が伸長したことが大きく寄与し、2年連続の黒字決算を迎えることが出来ました。
 共済事業では、契約こそ前年並みでしたが、喜ばしいことに契約者の被災が少なく、2年連続で支払が少なかったことが奏功し、準備金に繰り入れることが出来ました。
 一昨年、日本コメ市場㈱と事業統合した全米販の子会社㈱クリスタルライスも、2年度目の決算を黒字で着地しています。
 このうち赤字の続いていたネット事業は昨年、ネット通販と消費拡大「ごはん彩々」を分離し、「ごはん彩々」の運営業務を事業部から組織戦略室へ移管しました。残ったネット通販は当初、なお赤字の見込みでしたが、「おこめ券」収入が増えた結果、黒字で着地できました。今年度は本格的な黒字化の検討に着手する予定です。

 ここで、昨年4月1日に新設した「組織戦略室」に触れておきます。皆様にとっても「価値のある全米販」をめざし、全米販の社会的な立場をも強化することを主な目的として、設置いたしました。その活動の一環として、「見える化をはかる」皆様の声を反映し、ガバナンス強化のため定款など諸規定の改訂に着手しました。本日ご審議の上、了承いただく運びです。残る諸規定も数多いため、引き続き今年度も総務部を中心に改訂作業を続けていく所存です。
 また組合員の皆様への情報伝達媒体である「KOME速報」の発行業務も昨年、業務部から組織戦略室に移管しました。発行形態を一新し、刊行ペースも早めており、今年度はそれらのさらなる拡充を予定しています。
 最後にもう一つ。事業計画案に登場する「中長期ビジョン」についてです。きっかけは昨年12月、基本法検証部会に農水省が提出した資料でした。およそ20年後、2040年の主食用米需要が500万tを割るとの試算が示されたことでした。もちろん単純計算に過ぎませんし、この種の試算は以前から何度も出されていましたが、インパクトが大きかったのは事実です。
 そこで、将来の米穀流通を推察し、組合員卸が策定する経営計画の一助となる未来図を描くことが必要であると考えました。あくまでもビジョンですので、前提条件などを変化させることにより、複数の絵姿が描かれると思います。すでに㈱日本総合研究所とタッグを組み、全米販側もチームを組成して、検討作業に入る準備が整いつつあります。この作業は急ピッチで進める予定で、年内には複数のビジョンを組合員の皆様に示すことが出来ると考えています。その後に、全米販の組織としての選択肢も形づくることにしています。

 以上の各議案について、どうぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げます。

 最後になりますが、組合員の皆様が、生産者、消費者双方に役立つ存在として認められる米卸として発展していけるよう、全米販は、皆様ととともに考え、行動してまいります。引き続き、全米販の活動にご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。