◇ 令和5年産米の価格転嫁「ほとんどできている」30.6%、日米連調べ

 日米連(《一財》日本米穀商連合会、山﨑政治理事長)はこのほど、「令和5年産米(新米)に関するアンケート」調査結果をとりまとめた(11月30日付)。それによると、価格転嫁が「ほとんどできている」割合が30.6%(前年比+21.6ポイント)、「少しできている」割合は65.3%(+12.5ポイント)だった。価格転嫁が進んでいる結果に対し日米連では「適正価格を維持している」との認識を示した。
 価格転嫁ができている理由を訊いたところ、「物価上昇で理解を示してくれるお客様が多い」「値上げに対して不本意だが納得している様子」との声がある一方、「家庭用はほぼできているが、業務用は弊社が望む金額の6~7割ぐらい」「価格の転嫁はできているが、数量的には減っている状態」「買い控えや必要な量の購入が増え、5kg米の販売量が増え10kg米の販売が減少した」との声も見られた。
 売れ筋の変化については、「価格転嫁をしても売れ筋の米に変化がない」が63.3%と、続く「価格が安い米に売れ筋が移っている」の34.7%を大きく上回った。
 今年の世相を反映した設問として、令和5年産米の1等比率低下の影響で、食味や品質に対する消費者の反応を訊いたところ、クレームが「ほぼない」が63.3%、「多少ある」が32.7%だった。日米連は、「メディアによる報道や、周知用ポスターの効果によって、この割合で済んだのではないか」と分析。また有機米や減農薬米などの売れ行きを訊いたところ、「例年と変わらずほぼ横這い」が59.2%だった。
 調査は今年11月中旬~下旬、HACCP適合事業者のうち、メール登録している約350事業者を対象に調査したもので、有効回答49件、回収率およそ14%。

【観戦記】「価格転嫁できても売れ筋に変化がない」のは何故?
 米は、価格が上がると消費量が減る。しかし一度逃げた消費量は、価格を下げても戻って来ない――とは、一頃昔からこの業界で言われる話。昨年から今年にかけて、「本当なら100%増嵩コストを価格転嫁したいが、それで消費量が減って結果的に売上が落ちるのが怖くて、強気になるのも限度がある」という声もよく聞く。では、上記の日米連のアンケート結果は、どう捉えればいいのだろうか?
 価格転嫁が「ほとんどできている」30.6%(+21.6ポイント)、「少しできている」65.3%(+12.5ポイント)と、令和5年産では価格転嫁「できた」割合が大躍進を遂げた。ところが別の設問では、「価格転嫁をしても売れ筋の米に変化がない」63.3%。何とビックリ。「価格転嫁できても売れ筋に変化がない」のである。これは、どういうことか。二つの解釈が考えられる。
 ① 昨年から今年にかけては、米だけでなく他の食品、諸物価が一斉に高騰した。こうした環境が、「価格が上がると消費量が減る」のではなく、値段が多少上がっても消費量の減少に直結しない結果をもたらした――のではないか。
 ② いやいや、依然として「価格が上がると消費量が減る」米の〝力学〟構造に変化はない。今回、「価格転嫁できても売れ筋に変化がない」のは、価格転嫁の度合が不十分だったからではないか。つまり、まだ値上げする余地が残されている――のではないか。
 さて、どちらなのでしょう?