◇ 神明が合弁会社、法人経営できる若手農業者を育成、最長4年で暖簾分けへ

 ㈱神明(東京都中央区、藤尾益雄社長)と農業生産・加工・流通法人のりす㈱(埼玉県吉川市、互泰行社長)は9月21日、合弁会社㈱神明アグリイノベーション(埼玉県加須市、互泰行社長)を設立したと発表した。同日、都内で開いた会見で明らかにしたもので、設立は9月1日付。合弁会社は、大規模生産法人の経営ができる新規就農者の育成を目的としたもので、最長4年で〝卒業〟後、実際に大規模生産法人を暖簾分けの形で設立する。

 のりす㈱は、埼玉県内25農業生産法人・個人の農業従事者150名を束ねるグループ会社で、㈱神明は言わずと知れた国内最大手米穀卸。この2社がタッグを組んで、以下の㈱神明アグリイノベーション事業にあたる。
 ①自らも大規模化複合生産を実施し、規模限界の可能性を模索しながら、大規模農業者をめざす若手農業者を公募、雇用就農資金を活用し、育成。
 ②3~4年を目途に暖簾分け方式で独立。
 ③10年計画で法人化、大規模化、経営安定化をサポートし、実現に導く。
 ④生産のサポートだけでなく、全ての品目の販売もサポート。

 ㈱神明アグリイノベーションは、資本金1,000万円。出資比率は、のりす51%、神明49%。取締役会長に市川治郎㈱神明米穀事業本部農産部シニアアドバイザー(元日本マタイ㈱米穀事業部企画開発部長)、代表取締役社長に互泰行のりす㈱社長のほか、取締役には、のりす㈱側から松永渡副社長、鳥海充㈱とりうみファーム社長、原直樹 原ファーム代表(JA埼玉県青年部協議会委員長)、㈱神明側から松木飛鳥米穀事業本部農産部農産開発室が名を連ねる。
 具体的には、「営業」窓口を担うのが市川会長と松永取締役、「生産」担当が互社長と鳥海取締役、「指導・育成」は早川良史マネージャー(㈲早川農場代表)と鳥海取締役、「企画」にはAGNコーポレーション㈱、「サポート」には㈱加須畜産の協力を仰ぐ。

 「未来を耕せ」のスローガンのもと、10月下旬から公募開始。「独立が前提であるため、チャンスを掴む気概を持った人、男女問わず35歳まで、学歴不問」が募集要項で、詳細はホームページで近日告知。
 「本音を言えば米を作付けてもらいたいが、『他の作物を栽培したい』との声も少なからずある。今のところの予定では、暖簾分けした生産法人が、6年目に米35ha、小麦45ha、大豆45ha、蕎麦20ha、計およそ150haの作付規模になっていれば、収支均衡する計画」(市川会長)。全ての品目を二毛作ではなく、単作複合経営で行う方針で、米は県奨励品種を乾田直播で作付、小麦は「タマイズミR」を契約栽培、大豆は県産「里のほほえみ」を契約栽培、国産需要の高い蕎麦を契約栽培するほか、飼料用トウモロコシの栽培にも手を伸ばす。「もちろん米を作付けて欲しいが、まず『儲かる農業』に育ってくれないと」(神明・藤尾社長)。
 市川会長は「この取組みが仮にうまくいけばの話だが、似たような仕組みを全国展開していきたい。すでに第2拠点の開設は福島で計画している」とも。

(左から)藤尾神明社長、市川神明アグリイノベーション会長、互のりす・神明アグリイノベーション社長、松永のりす副社長